プリメーラのACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール、車間自動制御システム)を使っての感想です。
高速道路をセットした一定の速度で走り、前の車につかえるとレーダーで検知して、それに合わせた速度で走ってくれるものです。
私は以前、高速道路を走るのが嫌いでした。
疲れるからなんですけど、その原因のひとつに、「速度の維持」がありました。いつのまにかスピードが落ちてしまったり、上がってしまったりしないように、スピードメーターをちらちら見ながら、けっこう気を遣いながら運転していて、それが疲れました。
このACCにより、その単純作業から解放されました。おかげで、高速道路を走ることに抵抗がなくなりました。
プリメーラのACCは、前の車に急接近したときは、アクセルの調節だけでなく、ブレーキもかけてくれます。そのときは、フットブレーキのペダルが動きますし、ブレーキランプも点灯します。
ただし、急ブレーキまではかけてくれませんので、事故や渋滞等に備えて、自分でブレーキペダルを踏む用意は必要です。
右写真:ボンネットを開けたフロントグリルの内側を真上から。「クラス1レーザ製品」という黄色いシールがあり、白いシールにはオムロンと書いてあります。

使い方について、簡単に紹介します。
操作スイッチは、ハンドル内の右下にあります。
高速道路に進入し、あるていど加速して「SET」ボタンを押すと、その時点の速度がセットされます。あとは、アクセルペダルから足を離しても、その速度を維持してくれます。登り坂であろうと、下り坂であろうと、速度は一定で走り続けます。
その後、「加速(ACCEL)」ボタンを押すと、設定速度が5キロ上がり、「減速(COAST)」ボタンを押すと、設定速度が5キロ下がります。
変化した結果は5キロの倍数単位で、最初にセットしたのが半端な速度であっても、93→95→100のように、わかりやすい段階で変化します。
レーダーで前の車を検知すると、それに合わせて追従走行を始めます。前の車の速度に合わせて、車間距離を一定に保って走りつづけます。基本的にはアクセルで速度を調節しますが、必要であればブレーキもかけます。
ブレーキペダルを踏むか、「CANSEL」ボタンを押すと、セットした速度は解除されて、ふつうの走行状態に戻ります。
その後、「レジューム(RES)」ボタンを押すと、前にセットした速度が、再びセットされます。これは、本線料金所の通過時に減速した場合や、脇のインターから入ってきた車を避けるために一時的に減速した場合などに有効です。
車間距離は、右下のボタンで3段階にセットできます。1回押す毎に、3→2→1→3…と順に変化します。私は手動で運転していても車間距離をとる方なので、初期状態の一番広いモードで使っています。
右写真は、センターメータの左端にあるACCの表示部です。
下の「CRUISE」点灯がACCがONであることを示しています。
上の「100km/h」が設定した速度。
「車のシルエット」が、前走車をレーダーで検知し、いわばロックオンした状態であることを示しています。前走車がいなくなると、車の絵が消えます。
車の後ろに「点線が3個」あるのが、車間距離が一番広い「3」に設定されていることを示します。

よくできているな、と思った点です。
直前に割り込まれても減速しない
隣の車線から自車の直前に割り込んだ車がいても、必ずしも減速しません。どうやら前の車との相対距離の変化を考慮していて、前の車が遠ざかっていく場合は、近距離であっても減速しないようになっているようです。このへんは、実際の走行テストを繰り返した結果なのでしょうね。
設定速度の余裕
説明書には50〜100km/hの範囲で使えると書いてあって、最初はしばらくそういうものだと思っていたのですが、実際にやってみたら、110km/hまでセットできました。なかなかニクいところです。
カーブで減速
東名高速だと大井松田〜御殿場間には、R=300のような急カーブがありますが、自動的に減速します。セットしたスピードのままで、カーブをふりまわされるようなことはありません。ハンドルの切れ角を見ているようです。

いまいちかな、と思った点です。
雨が降ると使えない
日産のWebサイトのITSのページ(当時)でACCの説明を見ると、日産ではミリ波レーダーを使っていて、その特長として雨でも使えるという話だったので、おかしいなぁ、と思っていました。
どうやらそれは、シーマなどの高級車に搭載されているACCの説明で、プリメーラのACCは、廉価版のレーザーレーダーというものを使っているということがわかりました。
これは、値段が安くできる分、雨の日は使えないようです。
実際には、雨を検知するセンサーが付いてるわけではなくて、仕組みとしては、ワイパーを低速か高速で動かすとACCがセットできなくなります。
まあ、間欠ワイパーの一番短いモードにしておけばセットできるんですけど、前の車が水しぶきを上げて走っているような状態では、前の車をちゃんと検知してくれないので、やはり使いものになりません。
逆に言えば、間欠ワイパーで走れるていどの小雨ならば、前の車を検知してくれるので、ワイパーの速さに連動させるという仕組みは、よくできていると言えます。
スイッチが夜見えない
ハンドル内の右下にACCのスイッチがあるんですけど、夜になると真っ暗で見えません。
カーナビ・エアコン・オーディオ等を操作するインパネのスイッチは、夜ライトをつけると文字が浮かびあがるのですが、ACCのスイッチ付近は真っ暗で、スイッチの文字が読めません。
おかげで、「ブラインド・タッチ」ができるようになるまで、使いにくかった。
対面通行の高速道路で
対面通行・片側1車線の高速道路で、センターライン上に立ってる短いポールに、左カーブで反応してしまうことがあります。
まあ、いきなり減速には入らず、ピピピピと警告音が鳴るだけなので、実害はないとは言えるんですけど。
対策として、そのような対面通行の高速道路の左カーブでは、なるべく左寄りを走るようにしてます。
首都高で
首都高のような戦場では、使いものになりません。ブレーキを踏むと、セットしたスピードが解除されてしまうので、ブレーキを踏んで走ることがあたりまえの首都高では、うまく機能しないのです。
これは、ACCの問題というよりは、首都高の問題だと思いますが…
バイクとクラシックカーと変な車と
車線の端っこを走ってるバイクは、うまく検知できないことがあります。そのため、なるべくバイクの後ろは走らないようにしています。お願いですから、車線の真ん中を堂々と走ってください >バイク乗りの方々
テールランプの反射を検知しているせいか、申し訳ていどにテールランプが付いているだけのクラシックカーを、検知できないことがありました。テールランプが一定以上の大きさであるよう、規定してもらいたいものです。
最近はミニバン系の車で、テールランプが高い位置にある車がありますが、そういう車でも下の方に反射材のようなものが付いているので、基本的には検知してくれます。ところが、中にはそれを外してしまっている車もいて、追突しそうになることがあります。変な改造しないでください。
海外の車で、Puntoというのは検知できませんでした。
結局、全部の前走車を検知できるわけではないので、前の車を検知しているか、常に注意が必要です。まあ、検知率が99.99%とかになってしまうと、ドライバーが検知できているかを注意しなくなってしまう可能性もあるので、そこそこの検知率の方が安全なのかもしれません。
でも、テールランプの規格については、人間が見やすいか否かだけではなく、機械で検知できるか否かも基準にすべき時代になっていると思います。
フロントグリル
ACCを付けると、フロントグリルの大半が、ただのプラスチック板になってしまいます。内側にあるレーダーの電波を妨げないようにだと思いますが、あまりカッコよくはありません。
元々ACCを付けることまで考えずにデザインされたこととか、フロントグリルがただの飾りにすぎないことが、これで露呈してしまっています。
まあ、このおかげでACCが付いているか、容易に見分けられるとも言えますが。

トヨタなどでは、同じものを、RCC(レーダー・クルーズ・コントロール)と呼んでいるようです。
その後、マイナーモデルチェンジにより、プリメーラにACCのオプション設定はなくなってしまったようです。
実際、ACCを付けているプリメーラを見かけたのは、この3年間で他に1台だけでしたので、売れなかったのが原因だと思います。でも、高速道路で登り坂やトンネルに差し掛かったところで、スピードダウンしてしまう前走車を見かけることはよくあり、ACCを付ければいいのに、と思うこともしばしばです。
現在のところ、ACCが選択できる車種はわずかですが、いったんACCの快適さを経験してしまうと、ACCのない車に乗り換えようという気が起きません。レンタカーなどで、もっと手軽に経験できるようになれば、もっと普及するのではないでしょうか。
マーチやコペンのような車に、あたりまえのようにACCがオプション設定されるようになれば、車の選択肢が広がるし、高速道路の流れがスムーズになるのになぁ、と思うばかりです。
ちなみに、定価で7万円でした。